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遺産分割前にやってはいけない8つのこと【2026年最新】|法定単純承認と相続放棄
この記事の内容(全12項目)
この記事の結論(30秒でわかる)
- 遺産分割前に故人の財産に手をつけると、法定単純承認とみなされて、相続放棄ができなくなるおそれがあります。預金引き出し・遺品売却・形見分けは絶対に待ってください。
- 特に危険なのは、借金が遺産分割後に発覚するケースです。数週間〜数ヶ月後に督促状が届くことは珍しくありません。その時点で遺品を処分していると、もう放棄できません。
- 相続放棄の期限は原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。この3ヶ月は、財産を調べるための期間であり、片付けの期間ではありません。
- 財産調査(通帳・書類を探す・把握する)はしても問題ありません。 調べてから方針を決めてください。
- 本記事は一般的な説明です。個別の判断は必ず弁護士・司法書士に相談してください。
なぜ遺産分割前の処分がこれほど危険なのか
法律上、相続人が相続財産に手をつけると、「相続を承認した」とみなされます。 これを「法定単純承認」といいます。遺産分割前に故人の物を処分したり、お金を使ったりすると、法律は「この人は相続する意思が固い」と判断してしまうのです。
この仕組みが怖いのは、負債(借金)は死後すぐには見えないからです。消費者金融からの借入れ、知人への連帯保証、事業用の債務——こうしたマイナスの財産は、通常、数週間から数ヶ月後に督促状で初めて発覚します。その時点で「すでに遺品を売却していた」「預金を使ってしまった」という状況になっていると、家庭裁判所は「この人は負債があることを知りながら、相続を承認した」と判断して、相続放棄を受け付けません。 結果として、マイナスの財産ごと相続する羽目になりかねません。
法律が3ヶ月の熟慮期間を用意しているのは、まさにこの「見えない借金」を調査するための時間なのです。片付けはその後——これが鉄則です。詳しくは相続放棄する前に遺品整理してはいけない理由と相続手続きの順番にまとめています。
やってはいけない8つのこと(遺産分割確定まで)
以下の8つの行為は、すべて相続を承認したとみなされる可能性があります。方針が決まるまでは、絶対に避けてください。
| 行為 | 危険度 | 理由 |
|---|---|---|
| 故人の預貯金を引き出して使う | 極高 | 相続財産の費消。相続意思の最強の証拠と判断される |
| 遺品を売却する(フリマアプリ・買取業者へ) | 極高 | 財産の価値を移転。法定単純承認の典型例 |
| 故人の現金を使う(葬儀費用含む) | 高 | 現金も相続財産。「社会通念上相当な範囲」でも判断が分かれる |
| 形見分けをする(特に価値のある物) | 高 | 特定の品を相続人に渡す行為。相続意思の表現と扱われる |
| 故人の契約を勝手に解約して返金を受ける | 高 | 通信契約・サブスク・生命保険の返戻金など。返金の受け取りが相続承認と判断される |
| 故人の借金を立て替えて返す | 中〜高 | 負債への対応も含まれる。弁護士に相談してから |
| 故人が貸していたお金を回収する | 中 | 債権は相続財産。無断回収は承認と判断される場合がある |
| 不用品を「捨てる」(廃棄物処分契約) | 低〜中 | 一般的には「価値のないゴミ」なら問題ないと解釈されているが、「価値があるかないか」の判断は事後に争いになり得る |
共通するのは「相続財産の価値に動きが生じる」という点です。判断に迷ったら、「動かさない・使わない・処分しない」 が最も安全な原則です。
相続放棄を検討するなら、この4つはNGの最優先事項
すべてを暗記する必要はありませんが、次の4つだけは必ず避けてください。
- 預金の引き出しと使用:故人名義の口座から1円でも引き出して自分や他の相続人の用途に充てると、相続放棄が成立しない可能性が高まります。葬儀費用であっても、「社会通念上相当な範囲」という判断が後から問われるため、判断に迷ったら先に専門家に相談してください。
- 価値のある遺品の売却:家電・貴金属・古い家具でも、「売却できる可能性がある」と判断されれば相続承認と見なされる傾向です。「どうせ二束三文だから」という自己判断は禁物です(→遺品整理の追加料金トラブル事例集)
- 形見分けの約束:「この時計は兄に」「このコートは妹に」という形見分けは、相続人の間で「相続する」という前提で成立する行為です。相続放棄の可能性があるうちに勝手に約束すれば、法定単純承認と判断される可能性が高いです(→形見分けのマナー)
- 契約の解約と返金受け取り:生命保険・積立保険・通信契約の返金は、一見「処理」に見えますが、相続財産の処分行為です。受け取った時点で相続承認とみなされる可能性があります
これら4つは、期間の伸長申立てをした場合でも、ほぼ確実に相続放棄を妨げます。
逆にやってもよいこと
相続放棄を検討する際に、積極的に進めてよい行為があります。むしろ、これらなくして相続放棄の判断はできません。
- 財産調査のために故人の家に入ること:何度でも、自由に立ち入ってOKです。相続放棄の前提として、法律が認めている行為です
- 通帳・権利証・保険証券・契約書・督促状などの書類を探し、財産全体の把握:「どの銀行に口座があるか」「いくら借金があるか」を正確に把握することは、相続放棄の判断に不可欠です。郵便物・スマートフォンの契約明細・カード明細が手がかりになります(→遺品整理で必要な書類一覧)
- 腐敗する食べ物など、放置すると衛生害が生じる物の最低限の処理:生ものの腐敗、蔦に侵食された建物の応急処置など、「放置が危険」という状況は例外です。ただし判断に迷ったら(例:ペットの世話、カビが生えた部屋の通風など)は専門家に先に相談を
- 葬儀を社会通念上相当な範囲で行うこと:通常の葬儀は認められています。ただし、故人の財産から支払う前に金額の妥当性を弁護士に確認することをお勧めします
- 貴重品・現金の保管:財産の一部として発見した現金や貴重品を、勝手に使わずに保管しておくのはOKです(→遺品整理で貴重品・現金が出てきた場合の対応)
つまり、「調べる」のはOK、「動かす」はNG——この線引きを覚えておくことが、相続放棄の成功に直結します。
相続放棄の期限と手続きの全体像
期限:相続を知った時から3ヶ月以内
「相続を知った時」は、通常は故人の死亡日です。ただし、離れた親族の場合、訃報を知った日が相続開始から遅れることもあります。その場合、「知った時」から3ヶ月になります。
相続放棄は原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。期限は3ヶ月を1日でも過ぎると、家庭裁判所はほぼ受け付けません。よほどの事情(例:詐欺で3ヶ月経つまで相続の事実を知らされなかった)がない限り、期限後の相続放棄はできません。
期間伸長という選択肢
調査が終わらなければ、家庭裁判所に「期間伸長の申立て」を提出してください。これにより、期限を最大2ヶ月延ばせます。その間に借金の有無をさらに確認し、その後で相続放棄するか・限定承認するか・単純承認するかを決定できます。
手続きの流れ
- 書類を準備:相続放棄申述書(家庭裁判所のウェブサイトで入手)、死亡診断書、相続人の戸籍謄本
- 家庭裁判所に申述:故人の住所地を管轄する家庭裁判所に書類を郵送または持参
- 審査:通常は書類審査。疑問がある場合は電話や出廷を求められることもあります
- 決定:審査を経て「相続放棄の申述受理証明書」が発行されます。これで放棄の効力が生じます
相続放棄の手続き自体は単純ですが、期限内に申述することと、必要書類を正確に揃えることが何より重要です。初めての場合は、弁護士または司法書士に依頼することをお勧めします。
遺品整理を先に始めていいケース・待つべきケース
遺産分割の方針が決まる前に遺品整理を始めるのは原則NGですが、状況によっては例外があります。
待つべきケース(相続放棄の可能性がある場合)
- 借金の有無が不明で、相続放棄を視野に入れている
- 故人の財務状況が複雑(事業用資産・複数の不動産・遠い親族がいる等)
- 遺品の価値判定が難しい(骨董品・美術品等がある)
→ 必ず、相続放棄か限定承認かの判断が確定してから遺品整理を始めてください。相続税の申告が絡む場合は相続税と遺品整理もあわせてご覧ください。
始めてもよいケース
- 相続することが確定している場合:プラスの財産が明確に大きく、放棄の選択肢がない場合は、遺産分割協議と並行して遺品整理を進められます。ただし、相続人全員の同意があることが前提
- 賃貸住宅で退去期限が迫っている場合:家主からの強い退去要求がある場合は、相続放棄を検討する前に弁護士に相談してください。対応方法がある場合があります。例えば、期間伸長の申立てと並行して、物件管理人と退去期限の交渉、または相続人全員で責任を持って片付けを進める等。自己判断で処分してはいけません(→賃貸の遺品整理と退去期限)
曖昧な判断は禁物です。状況が複雑なら、早期に弁護士・司法書士に相談するのが最良の選択肢です。
トラブル事例と対策
事例1:「預金なら大丈夫」と思って引き出し、借金が発覚後に相続放棄できず
状況:故人の銀行口座から葬儀費用のために引き出した現金を使用。数ヶ月後、故人の消費者金融からの借入金と税金滞納が発覚。相続人は相続放棄を申し立てたが、「すでに預金を引き出して使っているから相続を承認している」と判断されて却下された。結果、負債をすべて相続することになった。
ポイント:葬儀費用であっても、「社会通念上相当な範囲」という曖昧な基準で後から判断されます。「いくらまでなら大丈夫か」は事前に専門家に相談すべきです。
事例2:「古い物だから価値ない」と遺品を売却、相続放棄が認められず
状況:親の遺した家具類をフリマアプリで売却。数か月後、クレジットカード未払い金が発覚。相続放棄を申し立てたが、「遺品を売却して現金化した=相続財産を処分した=相続を承認した」と判断されて不受理。
ポイント:売却額の大小は関係ありません。「価値があるかないか」の判定は事後に争いになるため、放棄の可能性がある間は売却厳禁です。
事例3:銀行口座が凍結され、葬儀費用が払えずトラブル
状況:親が亡くなり、相続人が銀行に相続を報告。銀行が口座を凍結し、遺産分割協議書がないと預金を払い戻せないと言われた。相続放棄の可能性を検討していたが、葬儀業者から急ぎの支払いを求められた。
ポイント:銀行口座の凍結は死亡報告後に自動的に起こります。葬儀費用は故人の預金から支払う前に、必ず専門家に確認すること。葬儀社への支払いは、相続人自身の立替払いというオプションもあります。
事例4:相続放棄のつもりが、家の掃除で「保存行為」と混同されてトラブル
状況:祖父の家が、火災で周囲に迷惑をかけるほど傷んでいたため、孫が「応急修理」として屋根を部分的に塞いだ。その後、祖父に多額の債務があることが判明し、相続放棄を申し立てた。
ポイント:建物の応急修理が「保存行為」か「相続承認」かの判断は、事後に争いになりやすいです。金額が大きい場合は、事前に家庭裁判所または弁護士に相談するのが安全です。
限定承認という選択肢
相続放棄ではなく、「限定承認」という選択肢もあります。
これは、「相続財産の範囲内でのみ、プラスもマイナスも相続する」という意味です。例えば、プラスの財産が100万円、マイナスが60万円の場合、限定承認なら60万円だけ支払い、残り40万円を受け取ることができます。
ただし、限定承認は相続人全員で家庭裁判所へ申述する必要があり、手続きが複雑です。期限は相続放棄と同じく相続開始を知った時から3ヶ月以内。判断に迷ったら、相続放棄と限定承認のどちらが有利かを弁護士に相談するのが得策です。
詳しくは相続手続きの順番をご覧ください。
関連記事マップ
遺産分割前の判断・相続放棄・遺品整理に関する関連記事は以下のとおりです。
- 相続放棄・単純承認:相続放棄する前に遺品整理してはいけない理由 → 相続手続きの順番
- 遺品整理の基本:遺品整理の基礎ガイド → 遺品整理の費用相場
- 必要書類・貴重品:遺品整理で必要な書類一覧 → 遺品整理で貴重品・現金が出てきた場合の対応
- 手続き期限:死後の必要手続き一覧 → 遺品はいつから処分していい?
- 費用の負担者:遺品整理費用は誰が払う?
- 賃貸・退去:賃貸の遺品整理と退去期限
- 相続税:相続税と遺品整理
- 形見分け:形見分けのマナー
- 地域別:香川県の遺品整理
よくある質問(FAQ)
Q. 故人が生命保険に入っていました。受け取りは相続承認になりますか? A. なりません。生命保険の死亡保険金は、契約で指定された受取人のものです。これは相続財産ではなく、受取人固有の財産です。そのため、受け取ることは相続承認にあたりません。ただし、受取人が「故人」になっている場合は、その保険金は相続財産になり、受け取ると相続承認と判断されます。契約書を確認してください。
Q. 葬儀代を故人の預金から引き出しました。もう相続放棄はできませんか? A. 「社会通念上相当な範囲」の葬儀費用については、家庭裁判所が相続承認と認めない傾向もあります。ただし、金額や内訳が争点になり得ます。相続放棄を検討しているなら、弁護士に相談してください。事情によっては放棄が認められることもあります。
Q. 遺品整理業者から「今すぐ契約すれば安くする」と言われました。契約して大丈夫ですか? A. 危険です。相続放棄を検討している段階で遺品整理業者と契約すると、遺品を業者に預けた時点で「相続を承認した」と判断される可能性があります。方針が決まるまでは、契約も見積もりも先延ばしにしてください(→悪徳遺品整理業者の手口と見分け方)。
Q. 故人が所有していた車は、どうなりますか?相続放棄する場合は手放す必要がありますか? A. 相続放棄した場合、故人の財産には原則手をつけられません。ただし、車が廃車状態で管理に費用がかかる場合など、特殊な事情があれば家庭裁判所に相談してください。いずれにせよ、相続放棄が成立した後は、管理責任も相続人にはかかりません。
Q. 親族から「遺品を売ってお金にしよう」と提案されました。応じても大丈夫ですか? A. 危険です。親族からの提案でも、相続放棄を検討している間に遺品を売却すると、相続承認と判断されます。「相続放棄を考えているから待ってほしい」と親族に説明し、方針が決まってから対応してください。
Q. 3ヶ月を過ぎてしまいました。もう相続放棄はできませんか? A. 原則として、期限を1日でも過ぎると相続放棄は受け付けられません。ただし、やむを得ない事情(例:詐欺や特殊な状況で3ヶ月経つまで相続の事実を知らなかった)があれば、期限後の放棄が認められた例外もあります。必ず弁護士に相談してください。時間が経つほど、立証が難しくなります。
Q. 遺品整理を業者に依頼する場合、いつから始めるのが安全ですか? A. 相続放棄の判断が確定した後、または相続することが確定した後に始めるのが安全です。相続放棄する場合は、遺品整理業者への依頼自体が単純承認とみなされる可能性があるため注意が必要です(→遺品整理業者の選び方)。
参照元・データについて
- 本記事は遺産分割・相続放棄・法定単純承認に関する一般的な法制度の説明であり、法律相談・個別の助言ではありません。実際の判断は必ず弁護士・司法書士にご相談ください。
- 相続放棄の期限(相続開始を知った時から3ヶ月以内)は民法915条(熟慮期間)に基づきます。相続人の順序と法定相続分は民法886条〜890条に定められています。
- 法定単純承認に該当する行為の具体例は、判例および各地の家庭裁判所の運用を参照しています。判断は個別事情で変わるため、あいまいな場合は必ず弁護士に相談してください。
- 葬儀費用の「社会通念上相当な範囲」については、判例および弁護士会等の見解を参照していますが、金額・内訳によって判断が分かれることがあります。
- 遺品整理の進め方は遺品整理の基礎ガイド、費用相場は遺品整理の費用相場をご覧ください。香川県内の対応は香川県の遺品整理で提供しています。
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